ふとしたきっかけでレッスンを行うようになって30年経ちました。
そして最近、「失われた30年」という言葉を耳にすることが増えました。
個人的な事と社会的な事がリンクしていて面白いと思っています。

確かに社会の経済的な成長は緩やかだった気がします。
個人的には音楽では年収！16万円からのスタートなので少しだけ
成長カーブが良い気がします。

丁度、仕事をし始めた時はバブル崩壊が実感として
ひしひしと伝わってくるような時期でした。
先輩ミュージシャンだと月に数十万円程度稼いでいた人たちが
～1/10程度の稼ぎになっていたような状況です。
ですから先輩たちも必死で、とても助けて貰えるような状況ではありません。
目の前で様々な機会のシャッターが下りていく実感がありました。

しかし若さゆえか前の状況と比較することもなく
お金も色々もない状況を
そんなもんだと思いながら個人的にはさほど苦にすることなく
生きていた気がします。

継続していくのにある程度の楽観主義と空腹に強い資質は助けになったのかもしれません。
勿論、多くの方に陰になり日向になり助けていただいたのだろうとも思っています。

何にせよ右も左も分からない若者ですから
一生懸命だったともモラトリアムだったともとれるような
時間を過ごしていた気がします。

社旗的には不景気にも慣れてきて落ち着いてきたかなと思ったころに
リーマンショック（2008年）がありました。

このころはレッスンをしながら演奏活動も活発にしていて
マニアックで実験的なお金にならない事ばかりしていた気がします。
日々何とかやりくりしながら生きていましたがこれはこれで楽しい時期でした。
こちら方面はどうせ稼げそうもないことをやっていたので不景気は関係なかった気がします。

ちなみに教室の月謝はリーマンショック当時の相場に
しています。教室にはやはり影響があって急に通えなくなる子供たちも
少なからず居ました。レッスンを辞めるのみならず進学も止める子がいて
その話を聞いた時の悲しさは今も覚えています。
通う方の経済的負担はなるべく減らしていきたいという思いは
その頃に由来しているのかもしれません。

経済や社会から見るとこの30年間の
のんびり成長していた（落ち込んでいた？）時代は
別の面からみると牧歌的な時代だったのかなとも思えてきます。
ゆっくりな変化のお陰である程度世代を離れていても
共有できている部分が多くあったのだと思います。

実はあまり実感はないのですが気が付けば30年経っていました。
自分がそれなりの期間仕事をしてこれたのは世間、世代の変化が緩やかだったお陰なのかも
しれません。

お陰で表層的な事を追うだけではなく世代や趣向の違う皆さんに共通して
お伝えすることが出来る内容を
理解し体現できるまで試行錯誤してくることが出来ました。

そんな事柄が分かるまでその緩やかさのお陰でゆっくりと成長させて貰えたのは
贅沢でありがたい事だと思っています。
そんな自分がこれからの世の中の変化をどの様に感じて
過ごしていけるのかを体験できるのも楽しみです。

恐らく時代が変わっても静けさとゆっくり、じっくりは人の中の何かが育まれるのに
大切な要素だと思っています。
世の中の変化を楽しみつつも教室ではそれを大切にしていきます。

一瞬一瞬はささやかでも積み重なるとコクがある時間にしていきましょう