昔、色々なアルバイトをした。
ミュージシャンから学べることもあれば
学べない事もある。
演奏が出来ればそれなりに状況は開けていくが
誰も「仕事とは」を教えてはくれないので自らの体験で
様々な職業を支えている根幹を知る必要がある。

若い時に様々な職業を直に経験させていただくには
アルバイトは最適だ。
なるべく個人経営の本職の人が多いところを選んでバイトをした。
それなりに器用さとがむしゃらさはあるので
大概は重宝され可愛がられた。
ある程度そんな体験をした後で最後のバイトだと思って
チェーン店という構造のところでバイトをしてみようと思った。
そこでデリバリーのピザ屋さんでバイトした。
作ったり、仕込みをしたり、配達をしたり、
時に店長の代わりに(店長が失踪して不在になっていた時期がある。
それでもお店は回っていくチェーン店という構造の不思議さ)
様々なことをした。

チェーン店にはマニュアルがある。
その前は日本料理~和食のお店で数年働いていた。
最初はお運びと接客、皿洗い。
そして賄(まかない)を作るようになって
仕込みを覚えて、焼き物と揚げ物を担当して、
しばらくして魚のさばき方をいくつか教わって……
道具の扱いは見て覚えて
のような感じで仕事を覚えた。

ある程度のレシピはあったが基本はさっとお手本を見せていただいて
味と形を覚えて、真似をして確認してもらって任されてという
手順で覚えていく。

もう一度書くチェーン店にはマニュアルがある。
入ったら「これ読んでおいて」と渡される。
分からない事を聞くと「マニュアルに書いてある」と言われる。
まぁ読んで理解することは別に難しい事ではない。
マニュアルを見ながらピザを作っていく。
生地の伸ばす大きさとトッピングの分量程度の事。
何度か読みながら作って食べて。
何故この分量にしたのかを推察していく。

段々とそのレシピを作った人が想定している世界・味の感じが
つかめてくる。
そうすると見た目と味の足し算で何となく正解が分かるようになってくる。

余談だが育ちなのか、たまたまなのかは分からないが
材料と分量と技法と手順が分かれば
どういった味になるのか推察できる才能はあるようだ。

話は戻して、そうすると分量の数字から考えることは
なくなってくる。
数字を手掛かりに味に行きつき
味で考えられるようになっていく。

マニュアル(手引き)を読むとはこういったものだと思う。
別にそんな風にしなくても数字通りつくれば味はついてくるのも本当だ。
しかし奥行きのある仕事や理解した仕事にはなりづらいと思う。
まぁ単純に読書が好きかどうかだけな話なのかもしれない。

感覚的なものを数値化していく事は出来ない事はないが
読み手が数値しか読まないと本質や目的は失われていく。
向き合うべき対象が違えば仕事も扱いも違うものになっていく。

職人気質の料理店のような手順を繰り返しつつ
チェーン店のように一般化していく事
どちらも対立せずに必要な事だと思う。

なんの話かと言えば
よくある話。

秋の月はきれいです。